ことのハートクリニック

今シーズンから当院では2種類のワクチンを準備しており、10月15日から接種可能です。

  • 従来型のワクチン注射
  • 鼻の中に投与するワクチン(2~18歳の方のみ。注射ではないので痛みはありません)

予約に関しましては、インターネットからお願いします。

以下、インフルエンザワクチンについて詳しく知りたい方へ

成人の方には注射薬しかないため関係ありませんが、お子様に投与できる2種類のワクチンどちらもメリット・デメリットや特徴があり、結構重要なのでまとめます。(語弊なく端的に伝えるのが難しく、大切なお子様のことですのでお時間のある時に最後まで見ていただければ嬉しいです。)

  • 従来型のワクチン注射

すべての人が対象となります。今シーズンは3500円で接種ができ、小松市では助成があり無料で接種可能です。(ただし、これまでに接種のアレルギーが出た方、重篤な卵アレルギーの方は接種できません)

1-13歳までは2回接種まで可能です(この点も以下詳しく説明いたします)

  • 鼻に投与するワクチン

昨年までは個人輸入などで投与されてきましたが、厚労省の認可を得て、「2歳から18歳まで」が投与可能となりました。全く痛みのない投与方法ですので、注射が苦手なお子様にとっては有効な治療方法となっています。薬価が高いため接種の値段は8000円ですが、小松市の方は注射の方と同様に3500円の助成が使えるため、4500円で摂取可能です。

ポイントは2歳から18歳までが接種対象になることと、従来型でアレルギーがあった方も接種可能ですが、重篤な卵アレルギーの方は注射同様に接種できません。お値段は高いですが、2-12歳も1回接種で終わることが特徴です。

もう一点重要な点は、こちらは「生ワクチン」であることです。弱毒化したウイルスを投与して、薄く感染したようにして免疫(抗体)を獲得する方法です。

実際に感染させることから、国内第三相試験からは発熱が5.9%(プラセボ3.0%)に起こり、鼻汁/鼻閉が59.2%(プラセボ52.6%)、咳嗽は27.8%(プラセボ36.8%)に起こったと報告されていて、インフルエンザの発症は1.8%(プラセボは当然0%)でした。

また、ワクチン接種後にインフルエンザ発症された方からの水平感染も報告されています(添付文章にも水平伝播の可能性があることは記載されています)。

これらの観点から、接種後に本人が発症する可能性や、発症後に周囲の方や家族がインフルエンザにかかる可能性もゼロではないことを理解して、タイミングを見計らう必要もありそうです。

そして、現時点ではどちらのワクチンがより効果的かは現時点ではわかっていません。

もう一点、よく議論になるお子様に対する注射によるインフルエンザワクチン2回接種の意義について。

厚労省が認可したお薬の使い方(添付文章)に基づくと、12歳までは2回注射するとされていますし、厚労省のホームページでも13歳未満の方は2回接種となっています。(令和3年度インフルエンザQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp))

その一方で、KMバイオロジクスという会社の添付文章では3歳から12歳のデータでは、ワクチンを1回接種した後、ワクチンに含まれる4種類のインフル株に対する抗体が陽転した率は、Aカリフォルニア株、Aビクトリア株、Bブリスベン株は75%、60.7%、25%でしたが、2回接種時点では78.6%、78.6%、39.3%となっています。

また、アメリカWHOの推奨は9歳以上は1回接種でとなっており、ワクチンを2回接種したくない人にすると、上記1回接種と2回接種で大幅な抗体獲得率の上昇でないことも含め1回接種でもよいかもしれません。(この点も厚労省のHPには、WHOでは9歳以上には1回注射が適切である旨の見解があることはしっかり記載されています。)

その一方で、データの見方を考えると、上記のデータは健康日本人たった28例の検討です。

医学的にはたった28例のデータから、日本人の3歳から12歳全員に当てはめることは乱暴な印象を受けたりもします。

上記の通り、1回接種では順に25%、40%弱、70%も抗体が得られなかったのも事実であり、2回接種で上乗せ効果を期待したい方には2回接種も妥当と考えています。

また、先ほどの鼻ワクチンはA型2種類、B型1種類の混合となり、注射のほうはA型2種類、B型2種類のワクチンとなっています。

ワクチンは難しいですね。だからこそよく理解した上で、どのワクチンがお子様に合うのか、何回接種がよいのかを一緒に考えていきましょう。

P.S. 昨年度の当院データでは、インフルエンザの診断となった方でワクチン接種していた方の割合は37.3%(ワクチン非接種62.7%)でした。

ワクチン接種と非接種の方の母数が違うため、数字上の単純な比較はもちろんできませんが、昨年インフルエンザを発症した方ではデータ通りワクチン非接種の方が多かった印象と、やはり発症後も症状が軽微に済んでいたように感じました。

2024/9/10 琴野 巧裕